World Tryout
2019/11/28 連載

連載最終回:いろんなミッションが詰まったトライアウトが始まる!

"日本の野球少年の母"と言われたスポーツライター瀬川ふみ子さんに、ワールドトライアウトの魅力・可能性についてご取材いただいた記事をお届けする連載も今回で最終回。

早くもラストとなってしまいました。今回は、おそらく最も気になるであろうWorldTryoutの内容に迫ります!



トライアウトでは、なんと外国人選手たちと戦う!


そのトライアウトの内容が面白い。

ゲーム形式というよりは、ゲーム。

「戦力外になった選手たちの相手をするなら、同じレベルの選手たちと試合をさせないと力は計れません。とはいえ、日本のプロ野球とは試合ができない。社会人ともできません。となったとき、これだ!と思ったのが、アメリカでフリーエージェントになった選手たちです。NPBを戦力外になった選手と同等、または、その選手よりも力のある選手たちを日本に呼んで戦ったら面白いだろうと思ったんです」

それだけではない。もう一つ、彼らを日本に呼んでトライアウトをする目的がある。

「その選手たちは、日本球界で野球をしたいと思っている選手だったらベスト。そうすれば、NPBのスカウトたちがアメリカにいかずして、日本で視て獲得することだってできるじゃないですか。正直、日本のプロ野球もあまり視ずに、動画や調査書だけで選んでいるところもありますから。契約して日本にきてみたらハズレだったということもあるわけです。そうではなくて、ちゃんと見て選べるのですから、日本の球団にとってもいい試み。日本球界にアピールしたい外国人選手と、海外球団へアピールしたい日本人選手でゲームをしたら、両者にとって、また日米のスカウトにとっても最高のイベントになるはずですし、それを見る側にとっても、高いレベルの面白いゲームを見られるはずです」

ということで、今回のトライアウトの形ができあがった。

 「〝12球団合同トライアウト〟がある中で、この〝ワールドトライアウト〟ってなんなの?」と思う人たちも多くいるだろうが、「その違いは何か?」と言えば、12球団合同トライアウトはNPBの球団向けでもあり、最近は社会人野球や独立リーグのスカウトの方もきているので、そこに対してのもの。それに対し、このワールドトライアウトは、その3つも含め、さらに大きく世界に向けたトライアウトと思えばいいのかもしれない。

「NPBのスカウトさんも7~8球団来ることになっていますから、外国人選手相手に力を発揮する選手を見て、『ほしい』と言ってくる球団も出てくるかもしれない。それはそれで嬉しいことです」と田中さん。

そして、こう続ける。

「12球団合同トライアウトを受けて、そこでNPBの球団から話がなければ、日本の独立リーグにいくしか道しかない、というのは寂しいことです。前回も話したとおり、これまで独立リーグに進んだ選手たちの行く末を見ても、NPBに戻れる可能性は低いというのは数字にも出ていますから、それならば、アメリカに挑戦したらいい。今までそういう道がほぼなかったので、ここで私たちが道を切り開きます。そういう選手が増えていったら、きっと数年後には、NPB戦力外→米国挑戦→結果や経験が評価されてNPBに逆輸入 というケースも出てくると思いますよ」

まだ野球を続けたい、まだまだ挑戦してみたい、そう思っていながら、どうしたらいいかわからなかった選手たちにとって、それをサポートしてくれる、挑戦すべくノウハウを教えてくれるこの企画は、朗報かもしれない。



NPBを戦力外になった選手だけではなく、アマチュア選手や独立リーグの選手にもチャンスがある!

 ワールドトライアウトのもう一つの特徴は、NPBを戦力外になった選手だけではなく、独立リーグの選手、アマチュア野球選手にも出場のチャンスがあるということ。

「独立リーグの選手、アマチュア野球の選手、みんなが神宮球場のトライアウトに参加できるわけではありません。それはアメリカのトリプルAクラスト戦うのですから、それなりに力のある選手ではないといけません。そのため、アマチュアや独立リーグの選手に関しては、予選となるトライアウトに挑戦してもらいます。そこで勝ち抜いた選手には、本戦のワールドトライアウトに出場する権利を得られる。そして、NPBを戦力外になった選手や海外の招待選手チームとともに戦うことができる仕組みになっています」

 なるほど。その予選が、11月7日(木)に保土ヶ谷球場で行われた。今回、42名の選手がエントリーし、神宮球場への挑戦権を得ようと戦いに挑んだ。どんな選手が選ばれ、本戦でどんなプレーを見せてくれるのか、楽しみだ。



ワールドトライアウトなら、存分にアピールできる!

本戦となる〝WorldTryout2019(ワールドトライアウト2019)〟は、11月30日(土)神宮球場で行われるが、それがどんな内容なのか、ということも聞いてみた。

「12球団合同トライアウトの場合は、ピッチャーだと1イニングが勝負。打者3~4人ほどのピッチングで判断されることになります。野手だと、わずか3打席ほどしかまわってこない。不完全燃焼で終わることが多いでしょう。その点、このワールドトライアウトは、1日2試合をやりますので、打席ももっと回ってきますし、ピッチャーももっと投げられる。存分にアピールすることができると思います」

 そんなゲームの指揮をとるのは、清原和博氏。執行猶予の身ではある清原氏を起用したことは、驚きでもあったが、「もう一度球界に戻りたい」と願う清原氏にも、挑戦するチャンスを与えたということになる。

 「ゲームでの選手起用や采配はすべて清原さんに任せます。足が魅力な選手にはどんどん盗塁のサインも出しますし、この対戦が面白いだろうという場面では、きっとそういう対戦も実現させてくれるでしょう。そんな姿をお客さんが見るのも楽しいのではないかと思います」(田中さん)

そう。このイベントは、見る側からしても面白いものになっている。試合と試合の間に、ホームラン競争もあるのだ。

 「選手たちが一生懸命トライする姿というのは、見ている方もワクワクしますよね。海外では、スターへの階段をのし上がっていくオーディション番組は大人気で話題にもなっていますし、日本では昔から〝スター誕生〟という番組が人気だったように、必死になる選手たちを応援したくなるものです。多くの人に神宮球場に足を運んでいただき、たくさんの声援を送っていただきたいですね」



エージェントも紹介!

 トライアウト後の流れとしては、米国球団からオファーがあった選手はそこと交渉。オファーがなくても、優秀な選手はアメリカに挑戦すべく、ワールドトライアウト社の方で支援をしていくという。その際、ちゃんとしたエージェントも紹介してくれるという。

 「日本球界で首をかしげてしまうことの一つとして、選手たちにちゃんとしたエージェントがついていないこともあります。たとえば、今回の佐々木朗希投手にも、高校の、いち教員である監督が、選手の進路についてアドバイスしているようでは危険だと思うのです。プロ野球の世界のことをわかっていますか?わかっていないですよね? 160キロを投げるピッチャーをどうやって育てるのかだってわかるはずがないですよね? 今までそんな選手を見たこともないんですから。進路は日本球界がいい、アメリカがいい、どっちがいいかってことも、監督だけではわからないですよね? そんな佐々木投手のような逸材を、日本全体で守ろう、育てようとするなら、彼にとって最善の育成方法をきちんとした識者が監督なり本人に指導をするべき。監督さんはわからなくて当たり前。監督さんが悪いのではなく、そういうシステムがないことがおかしいのです。これは一つの例ですが、こういう交渉事に代理人は絶対的に必要。今回のトライアウトでは、きちんとした弁護士を紹介する形でアメリカに送り出すようにしようと思っています」

 なるほど。確かにそれは必要だ。そして、エージェントまで紹介してくれるとは、ありがたいことだ。



野球に区切りをつけるためのイベントでもある。

 最後に...このワールドトライアウトには、もう一つ、大事なミッションが詰まっていることをお聞きした。

 それは、〝野球に区切りをつけるための試合〟でもあるということだ。

「ここまでこれだけ大好きな野球をやっていて、その野球に区切りをつけることっていうのは、本当に難しいことなんです。選手の中には『まだできるんじゃないか』という思いと、『やっぱり自分はもう無理なんじゃないか』という思いと両方あるはず。自分ではどっちにしていいかわからず、戦力外になったとしても、もう一度誰かにそれを見て判断してほしいと思っているはずです。そういう選手たちは『今、君の力はこうだよ』『まだいけそうだな』『いろんなことから判断して、難しいな』などと人に判断してもらうことを待っていると思います。それを判断してもらうのが、何十人、何百人、何千人という選手を見てきたスカウトさんだったら、その方々にしっかり見て判断してもらったら、たとえ、『難しい』という判断であっても、納得もするでしょうし、あきらめもつくと思うんです。そのためにも、公平な公開トライアウトは必要だと思うんです」

そこまで考えてくれているとは...いろいろ見てきた田中さん、さすがです。

最初、このイベントの話しを聞いたとき、「〝ワールドトライアウト〟ってなによ?」としか思わなかったのだが、これだけいろいろと聞いてみたら、すごく興味が沸いた。

戦力外通告をされた選手たちが、もう一度挑戦するワールドトライアウトは、11月30日、神宮球場、午前10時プレイボールです! 

ちなみに、ワールドトライアウトは、今後、今回のトライアウト以外にも、いろんなステージで開催を企画していくという。

「たとえば、野球の中で言えば、大学野球をやりたい全国の高校球児を一堂に集めて、東京や大阪でオープンオーディションをやるというのも面白いと思うんです。そうすれば、選手たちは一度に多くの大学野球の指導者にみてもらえる。大学野球の方も、遠くの高校まで見に行かなくとも、一度で大勢の選手たちを見ることができる。それも、多くの選手と比較しながら見ることができる。多くの選手にチャンスもあるし、公平に見てもらえる。コネがあったら入れる、コネがなかったらそれでその子の道が閉ざされてしまうのではなくて、実力をしっかり見てもらって、力があれば入れる、力がなければ、それに見合った大学に入れる、透明化してとてもいいと思いますよ」

野球以外のスポーツ、またはスポーツ以外でも、オープンなオーディションを行っていきたいと田中さん。見る側がワクワクするような企画、思わず応援してしまうような企画を楽しみにしていよう!

<取材・執筆:瀬川ふみ子>

■瀬川ふみ子
福島県出身のスポーツライター。
学生時代からシニアリーグ、ボーイズリーグなどの取材を始め、約30年に渡り、中学硬式野球中心に、少年野球、高校野球、大学野球、社会人野球、独立リーグ、そしてプロ野球の選手や指導者を取材して執筆。中学時代に出会った選手を、その後も追いかけ、何百人...何千人もの選手の成長を見守るとともに、多くの選手の〝野球人生引退〟までを見届けている。
著書に「松坂大輔 白球の軌跡」、共著に「甲子園だけが高校野球ではない」「最後のプレイボール」「ここで負けてしまってごめん」など。
かつては、野球少年たちの〝姉〟的存在であり、今は、〝日本の野球少年の母〟と言われ、プロ野球界にも親交の深い選手が多い。
一男一女の母でもあり、息子は甲子園球児、娘も女子マネージャーとして甲子園出場している。
ラジオ出演、講演、野球イベントのMCなども務める。