World Tryout
2019/11/22 連載

連載第2回:NPB(4A)に戻りたいなら、米国の3Aで勝負をかけろ!

"日本の野球少年の母"と言われたスポーツライター瀬川ふみ子さんに、ワールドトライアウトの魅力・可能性についてご取材いただいた記事をお届けする連載が前回よりスタートしました。

今回はその2回目。

COOの田中氏がWorldTryoutを作った経緯に迫ります。


NPBを戦力外になった選手が、再びNPB復帰するためにはアメリカにいくのが一番いい

 前回、〝WorldTryout(ワールドトライアウト)〟を立ち上げた方として紹介した田中聡さん。

アメリカに挑戦したことでNPB入りもできた田中さんは、現役を引退して10数年がたつが、毎年、NPBを戦力外になった選手たちを見るたび思うことがあるという。

「もう一度、NPB復帰をして野球をやりたいなら、アメリカに挑戦したらいいのにな」と。

それはなぜか...? 

 所属していた球団で「戦力外」「構想外」ということになった選手を、違う球団が獲得しよう、契約しよう、と、そこまで持っていけるということは、ほぼないというのが現実。

2018年をみても、戦力外と現役引退選手を合わせ136人(外国人選手並びに同一球団で育成選手再契約締結選手を除く)のうち、他球団と選手契約ができたのは、わずか9選手(NPB発表)しかいないという現実。

※参考:NPBの調査が始まった2010年以降の戦力外選手が他球団と選手契約できた人数
2010年...12
2011年...20
2012年...8人
2013年...7人
2014年...13
2015年...11
2016年...8人
2017年...10
2018年...9人

2018年は、ヤクルトを戦力外となった成瀬選手がオリックスへ。ソフトバンクを戦力外になった寺原隼人投手(35)と五十嵐亮太投手(39)がいずれもヤクルトへ。巨人戦力外の中井大介内野手(28)が横浜DeNAへ。楽天を戦力外となった細川亨選手(38)がロッテへ。どちらかというと、ベテランで、これまで実績がある選手は道があったが、実績のない若手選手のほとんどが、他球団から契約をもらうことはできなかった。

それならば...もう一度NPBに戻りたいのなら、どこで野球をしてそのチャンスをつかめばいいのか?

昨今では、その行き先として、独立リーグが主流となっている。

昨年も阪神を戦力外になった西岡剛選手が栃木ゴールデンブレーブスへ進んだのを始め、昨年だけで戦力外になった選手のうち12人が独立リーグにいった。

※参考:2010年以降、戦力外になって独立リーグ(四国ILリーグplus、BCリーグ、関西独立リーグ)に進んだ選手の人数(NPB発表)
2010年...4人
2011年...13
2012年...6人
2013年...3人
2014年...14
2015年...4人
2016年...10
2017年...7人
2018年...12

だが、これだけの選手がNPB復帰を目指し独立リーグに進んだが、復活を果たしたのは、この10年で10人に満たない。金森敬之、正田樹、山田秋親、三家和真、古村徹ら、ごくわずか。NPBを戦力外→独立リーグ→再びNPB という選手は、1年間に一人もいないことになる。

これについて、田中さんはこう話している。

「これからプロを目指そうという181920歳ぐらいの若い選手は独立リーグで野球をするのはいいと思います。でも、一度プロでやっていて、また戻りたいという選手が独立リーグにいって、いくら勝ち星をあげても、いくら打っても、NPBから評価はされにくいです」と。

理由はこうだ。

「独立リーグのレベルは、社会人野球チームや大学野球のチームよりも下になります。いい選手はもちろんいますが、圧倒的に層は薄い。その中で、たとえ、ホームランを1年間で30本打ったとしても、打った相手投手のレベルが低いとなれば評価は低いものしか得られません。いくら150キロ出して勝ち星を重ねても、相手チーム打線が弱いとなれば、そういう評価にはなりません。そこにいってまた来年のNPB復帰を目指そうと思っても、ほぼ無理なのです。実際、今年、東京六大学野球だけでも8人が指名されました。昨年は東都大学野球連盟からだけで15人が指名されました。それに比べて、独立リーグは10数チームあっても今年わずかに5人しか指名されていません(5人中2人は育成)です。『もうNPBに戻る気はない。でも野球はまだ続けたとい』という選手、知名度がある選手は、独立リーグで野球をし、地域を活性化させるということでもいいと思います。でも、再びNPBに戻るために選ぶ場所ではないんです」

なるほど...。

それならば、再びNPBを目指すには、どこで野球をやったらいいのか? 

その答えが、冒頭の「アメリカに挑戦したらいいのに...」というところなのだ。

「日本のプロ野球がアメリカでいったらどこのレベルになるかわかりますか? MLB(メジャー)、3A、2A、1A、ルーキーリーグ...となっていますが、NPBの一軍は、MLBと3Aの間に相当するのです。つまりは、〝4A〟です。NPBの二軍レベルが3Aになり、戦力外になった選手は2Aともいえるでしょう。それならば、日本の二軍レベルになる3Aに挑戦したらいいんです。そこで活躍できれば、メジャーから声がかかることもあれば、NPBから再び声がかかる可能性だって出てくるんです」

さらにこう続ける。

「日本には、3Aレベルのステージがないんです。日本の独立は、2A...いや1Aレベルですから、そこでいくらやっても評価されないのです。アメリカの3Aに挑戦して、そこで活躍することが、再びNPBに戻る近道なのです」

 これは、田中さんが実際に渡米して、挑戦して、アメリカでプレーして経験した末にNPB入りができたという経験者だからこそわかることだという。


どうしたらアメリカに挑戦できるの?

NPBを戦力外になった選手が、現役を続けるならアメリカ! そこに挑戦して、契約を勝ち取り、そこで活躍することによって、NPBに戻ってこられる可能性もあるから。という、理屈はわかった。

とはいえ、個人的にアメリカに飛び込むのは難しい。どうやったら球団のスカウトたちに見てもらえるの? どうやったら契約してもらえるの? それ以前に、トライアウトの情報もわからない... 一体、どうしたらいいのか? と思いますよね...。

そこに応えるべく企画したのが、今回のこの、〝WorldTryout(ワールドトライアウト)〟だという。

「戦力外にはなってしまったものの、もう一回挑戦したいという選手を集めて、世界に向けた〝公開オーディション〟つまりは〝ワールドトライアウト〟を日本でやろうと。そこには、アメリカのスカウトも招待し、みてもらおうじゃないかと。目に留まった選手は即契約となるかもしれないし、そうはならなくても、トライアウトをやってみて、これは面白いという選手がいれば、そこに挑戦するサポートをしてあげようと」

 戦力外になった選手が、現役を続けたい場合、選手界が主催する〝12球団合同トライアウト〟を受け、NPBの編成の方々に見てもらうのが通例となっているが、田中さん曰く、「このトライアウトしかやっていけないということはないですし、一度ではなく、何度か挑戦する場があってもいいでしょう」

「そもそも、日本にはこういったトライアウト...すなわち、公開オーディションが少ない」と田中さんは語る。

「アメリカでは、しょっちゅうトライアウトをやって、ショーケースをやって、自分でプレーできるところを自分で探してやっています。自分で野球をやるチームは自分で選ぶという感覚です。でも、日本にはその選択肢が少なすぎる、そこに対して、こういう場を設けてチャレンジさせたり、さらに情報を提供して、アメリカのトライアウトに挑戦する道も伝えていけたらと思っているんです」と。

 日本では、芸能関係のオーディションは頻繁に行われている。映画のキャスティングのオーディション、モデルのオーディション、歌のオーディションなど。ミスコンなども多い。でも、野球の世界には、オープンなオーディション、つまり、トライアウトが少ない。「野球に限らず、様々なステージでトライアウトがもっとあったら、みんなもっとチャレンジできるのに!」と田中さんは言うのだ。

第3回へ続く。


<取材・執筆:瀬川ふみ子>


■瀬川ふみ子
福島県出身のスポーツライター。
学生時代からシニアリーグ、ボーイズリーグなどの取材を始め、約30年に渡り、中学硬式野球中心に、少年野球、高校野球、大学野球、社会人野球、独立リーグ、そしてプロ野球の選手や指導者を取材して執筆。中学時代に出会った選手を、その後も追いかけ、何百人...何千人もの選手の成長を見守るとともに、多くの選手の〝野球人生引退〟までを見届けている。
著書に「松坂大輔 白球の軌跡」、共著に「甲子園だけが高校野球ではない」「最後のプレイボール」「ここで負けてしまってごめん」など。
かつては、野球少年たちの〝姉〟的存在であり、今は、〝日本の野球少年の母〟と言われ、プロ野球界にも親交の深い選手が多い。
一男一女の母でもあり、息子は甲子園球児、娘も女子マネージャーとして甲子園出場している。
ラジオ出演、講演、野球イベントのMCなども務める。